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最高裁判所第一小法廷 昭和30年(オ)297号 判決 1957年2月07日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

論旨第一ないし第三、第六及び第七について。

所論は違憲及び法令違反をいうが、その実質は原審の事実認定を非難するにすぎないものである。原判決は、訴外二宮光蔵と被上告人との間の判示旧宅地の賃貸借は一時使用を目的とするものであることを認め、右賃貸借は、昭和二三年六月二三日右土地につき換地予定地の指定通知がなされると同時に終了したものであり、従つて上告人が本件建物を競落した昭和二五年九月一二日当時、訴外二宮は右土地の換地である本件土地について借地権を有しなかつたものであることを認定し、また、右建物の競売手続において、建物の敷地について借地権あるものとして手続が進行せられたものであることを認むべき証拠はなく、建物の売買取引において特に取毀ち売却する旨の条件なきときは常に必ず敷地使用権あるものとして売却せられたものと認むべき根拠もない旨を判示した。原審の右判断は、その挙示の証拠に照らし、これを是認することができる。されば所論は採るを得ない。

同第四について。

原審の認定した事実関係の下においては、たとい所論のような事実があつたとしても、訴外二宮の借地権が一時使用のためのものであるとした原審の判断は、これを是認することができる。それ故、所論の違法は認められない。

同第五について。

原審は訴外二宮が借地権の届出も建築許可申請もしなかつた事実を、右二宮の借地権が一時使用のためのものであることの判断の一資料としたに止まり、右事実から直ちに上告人に借地権がないと判断したものでないことは判文上明らかであつて、原判決は、所論のように、私法上の借地権の存在と行政手続上の問題とを彼此混同したものではない。それ故、所論は採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 真野毅 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 下飯坂潤夫)

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